Insightsへ戻る
データ活用・DXPERSPECTIVE / 011

見やすいExcelが「使えるデータ」とは限らない——デジタル庁のHarunobuが示すDXの前提

複数の表をAIに渡す前に、構造を点検し、人が確認してから標準化する。機械可読性を実務の課題として考える。

Automize Insights公開: 2026年10月23日8 分で読む
複数の表計算データがチェックと人による承認を経て標準化され、整然とした保管棚に収まるイメージ図。

デジタル庁は2026年10月21日、Excel・CSV・TSVの機械可読性を点検できるオープンソースツール「Harunobu」を紹介した。行政データのルールに沿って採点し、問題となる箇所と理由を示す。紙で読みやすい表が、そのままシステムやAIに使いやすいデータであるとは限らない。Harunobuが扱うのは、DXの現場で繰り返し発生するこの基礎的な問題だ。[1][2]

「神Excel」はなぜ自動処理を難しくするのか

Excelは日常業務に欠かせない道具だ。一方、印刷時の見栄えを優先し、セルを結合したり、色だけで意味を表したり、同じ項目名を省略したりすると、プログラムが値の関係を判断しにくくなる。人間には分かりやすくても、処理する側には意味が曖昧になる。

例えば支店別売上の表で、支店名を複数行にまたがる結合セルにした場合、機械的に取り込むと下の行は空欄として扱われることがある。集計前に補正処理が必要となり、担当者の手作業が残る。デジタル庁はこうした印刷中心の表を、いわゆる「神Excel」の課題として取り上げている。[2]

問題はExcel自体にあるのではない。閲覧・印刷のための形式と、別のシステムへ渡すための構造化データでは、求められる設計が違うことにある。

機械可読性を三つのレベルで考える

Harunobuの基礎となる「行政データにおける機械可読性に関するルール」は、2026年3月31日に決定された。レベル1はデータの閲覧・転記、レベル2は集計・分析、レベル3はデータ間の連携や自動処理までを見据えた段階的な考え方だ。[2]

レベル1では1セル1データ、複数表の混在やセル結合、体裁だけの空白などが論点になる。上位レベルでは項目や数値の扱いをより統一し、他のデータセットと突き合わせやすくする。

Harunobuは実装済みのルールに従って100点満点で点検し、違反箇所と理由を示す。点数は機械可読性に関する適合状況であり、業務上の数値が正しいことまで保証するものではない。[1]

Harunobuができること、できないこと

HarunobuはStreamlitによる画面、CLI、Python APIという三つの利用方法を提供する。ファイルを見ながら確認したい担当者にも、定期チェックを仕組みに取り込みたい技術者にも使える。結果はJSONやCSVで出力できる。[1][3]

ただし、このツールの中心は採点と問題箇所の特定だ。雑多なExcelをすべて自動で分類・修正し、完全に統一されたデータベースへ変換する製品ではない。必要ならルールやAIによる修正、人による確認、承認、保存という別のワークフローを組み合わせる。

複雑なヘッダーや複数の表領域があるファイルでは、レイアウトの推定が外れる可能性がある。一部のルールは自動確認の対象外であり、チェック結果を人が見直す工程は残る。[2][3]

ローカル処理と外部AI連携は分けて考える

Harunobuは手元の環境で動かせる。外部AIによる判定補助を有効にしなければ、点検はプログラム上のルールで実行され、ファイル内容を外部サーバーへ送る必要はない。未公開データの確認にも適した設計だ。[1]

一方、ユーザーが任意でGemini、ChatGPT、Claudeなどの外部APIを利用する補助機能を有効化した場合は、設定したサービスにデータが送信され得る。導入前に情報管理ルールとの整合性を確認する必要がある。[1]

監督付きのデータ整備プロセスに組み込む

企業での使い方としては、各拠点からExcelを受領し、Harunobuで構造を点検し、問題を分類する。修正案をルールやAIで作成した後、担当者が結果を確認・承認してから統一フォーマットへ保存する。この一連の流れはHarunobu単体の自動機能ではなく、組織側が設計する運用だ。

例えば在庫データなら、結合セル、日付の書式、単位の違いを検出して元データのテンプレート改善につなげられる。最初から全社のファイルを直そうとするより、毎月繰り返し修正している帳票を選ぶ方が費用対効果を確かめやすい。

判断基準はツールの点数だけではない。集計前処理の時間、入力エラー、修正件数、チェック担当者の工数が実際に減ったかを測る必要がある。

DXの成果を左右するのは再利用できるデータ

もともとのルールは行政の公開データを主な対象としており、民間企業がすべて同じ基準を採用する義務があるわけではない。自社の利用目的に合う原則から取り入れるのが現実的だ。[1][2]

AIモデルを導入しても、入力データが曖昧で統一されていなければ、その解釈と修正に人手が必要となる。Harunobuの意義はデータ品質を『気をつけるべきこと』から『見つけて直せる問題』へ変えることにある。

DXのためにExcelをなくす必要はない。Excel内の情報を、人もシステムも同じ意味で扱えるようにし、修正と承認を追跡できる状態にすることが重要だ。

参考文献・出典

  1. [1]機械可読性ルール適合チェックツール「Harunobu」 デジタル庁 / Digital Agency · 2026-10-21
  2. [2]Excelの機械可読性を判定するツール「Harunobu」のご紹介 デジタル庁(公式note) · 2026-10-21
  3. [3]Machine-readability rules and Harunobu open-source project Digital Agency / GitHub · 2026-10-23 (accessed)

技術を、ビジネスの成果へ。

事業課題から実装・運用まで、一緒に考えます。

お問い合わせ

関連記事